ひょうご☆ふるさと~風だより。

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神戸の産業振興と経済活性化に40年以上尽くした経験を活かし、
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【神戸通信】ー「ファッション都市・神戸」

私は、大学を卒業すると、神戸の商工会議所に就職しました。

昭和45年4月のことです。商工会議所では、実に幅広い仕事をしましたが、その一つが「ファッション産業の振興」でした。

 

神戸は1973年に神戸商工会議所の会頭がいきなり「神戸はこれからファッション都市づくりを進める。」といわゆる 「神戸ファッション都市宣言」をしました。当時、神戸経済を支えていたのは、造船、鉄鋼と神戸港関連産業でした。いわゆる重厚長大型産業が経済の中心でした。

 

その当時、これまで日本経済を支えてきた重厚長大型産業に限界が見え始め、産業構造の転換が日本経済全体の課題でした。そのときの神戸商工会議所の会頭は、川崎重工業の社長を務めていたので、その会頭がいきなりファッション都市を目指すと言ったときは、驚きました。ファッション産業で神戸経済を支えることができるのか、と首をかしげる人が多かったと思います。私も、そのように考えていました。

 

しかし、その後、会頭の話を聞いてみると、「ファッション」とは、アパレルだけでなく、衣・食・住・遊のいわゆる生活文化産業全体を意味していることがわかりました。

 

会頭の考えは、神戸の造船、鉄鋼を中心とした単線的な産業構造ではなく、それに加えて食・住・遊の生活文化産業全体をファッション産業として振興していこうというものでした。ファッションを衣服だけでなく、衣・食・住・遊全体を指して定義したのは、神戸が最初でした。

 

都市づくりの理念として「ファッション都市」を宣言したのは、全国で神戸が最初でした。そのファッション都市宣言は、全国に大きな反響を与えました。神戸に続いて、大阪、京都、東京などの都市も、ファッション産業の振興に力を入れるようになりました。神戸では、アパレルに加えて、清酒、洋菓子、コーヒー等の食産業、くつ、家具、スポーツ用品、住宅もファッション産業です。

 

当時は、なぜ清酒がファッションなのかと疑問に思われました。商工会議所でファッション産業の振興の担当副会頭が清酒会社「白鶴」の社長、嘉納さんでした。私も清酒がファッションとはなかなか理解できませんでしたが、よく聞くと、清酒もボトルやラベルをもっとファッション化してデザインを良くし、味の方も女性向けの新しい清酒をつくることだと言われ、納得しました。

 

神戸では、ファッション都市づくりを進める中核組織として、神戸商工会議所が中心になって、兵庫県、神戸市にも働きかけて、「神戸ファッション協会」を設立しました。私は、その協会の専務理事として長く勤めていました。ファッション協会初代の会長は、当時の神戸商工会議所会頭の石野信一氏でした。

 

石野信一氏は、元神戸銀行の頭取でした。石野氏は、元大蔵省の事務次官を務めた人でした。歴代の事務次官の中でも、官僚のドンと言われた人でした。協会の会長はその後も、歴代の商工会議所の会頭が兼務していましたが、ファッション協会設立に尽力されたアシックスの鬼塚社長が協会長を務められ、アシックスの社員を協会に出向していただきました。

 

私がいた頃の協会の職員は、商工会議所、神戸市からの出向者と、アシックス、ワールド、田崎真珠からの出向者で構成されていました。協会は少人数ながらも、様々なファッションイベントを開催し、高く評価されていました。

 

特に力を入れたのは、若いデザイナーの育成でした。神戸ファッション協会が主催者となって、全国のファッション関係の大学や専門学校の学生を対象に「神戸ファッションコンテスト」を毎年開催し、優れた作品を発表した学生を選び、海外の有名な大学に留学させました。海外の大学は、イタリア、イギリス、フランスの有名大学です。学生を選ぶために各大学から教授などの専門家に来てもらい、直接、学生を選んでもらいました。

 

「神戸ファッションコンテスト」は海外のファッション大学への留学の登竜門として、全国的に有名になりました。日本全国の大学、専門学校の学生が、「神戸ファッションコンテスト」を目指すようになりました。「神戸ファッションコンテスト」より留学した若い人で、その後、ミラノ、パリ、ロンドンの有名なファッションブランド企業のデザイナーとして活躍する人が出てきました。

 

 

残念ながら神戸のファッション産業は昔ほどの勢いがありません。しかし、もう一度「ファッション都市・神戸」を見直そうという動きが出てきています。神戸も官民が一体となり、もう一度、生活文化産業として、ファッション産業の振興に力を入れていき、日本だけでなく海外にも通用する「ファッション都市・神戸」として広く海外にアピールしてほしいですね。

 

「ファッション都市・神戸」がかつての勢いを取り戻すことを心から期待しています。

 

  

2019.11.30(土曜日)午後3時30分 里山 歩樹