私は３年前、定年退職の直前に倒れて、生まれて初めて病院に入院
しました。
神戸のポートアイランドにある病院です。病院での生活はストレス
が溜まります。寝ていても緊張しています。そんな時に家族が病院
の近くにある公園へ、車いすに乗せて散歩に連れて行ってくれるの
が楽しみでした。
病院のあるポートアイランドⅡ期は山を削って埋め立てた人工島で
広い公園があります。公園には芝生が植えてあり、様々な樹木や草
花が植えてあります。車いすでいっても気分が晴れ晴れしてリラッ
クスする事が出来ました。病院の中とは違って、外の風景を見たり
爽やかな風に触れたりするだけでストレスが消えていくように感じ
ました。
びっくりしたのはその公園の中に小川があって清らかな水が流れて
いる事です。小川にはフナや鯉が元気に泳いでいるのが見えます。
小川では子供たちが釣りをしたり、網を持って川の中に入って魚と
りをしたりして楽しそうに遊んでいます。小川の傍まで行くと雀が
たくさん、川のせせらぎで水浴びを楽しんでいる光景が見えます。
公園の花壇には色鮮やか草花が綺麗な花を咲かせています。小川の
水が流れる景色を見るとリフレッシュして癒されるような気持ちに
なります。その時、川があると不思議にリラックスできるように感
じました。と同時に、山を削って自然を失くしながら、その一方で
は埋め立てをしてそこに川を作り樹木を植えて自然を復元している
事に何かおかしさを禁じ得ませんでした。
やはり人が生きていくのには自然が欠かせません。そして自然の中
でも水の力の素晴らしさを公園の小川を見て感じました。水がそば
を流れているだけで爽やかな風が発生して心が癒されるように感じ
ました。その時、私は、昔外国に行ったときに、街の中を清らかな
川が流れている光景を見て感動した事を思い出しました。日本の都
市でも倉敷野では町の中を川（疎水）が流れていて、倉敷の独特の
風情ある景観を形成しています。
そこで提案です。神戸の都心に小さな川を流してはどうでしょうか。
神戸市役所の前のフラワーロードは明治の初めは生田川が流れてい
たところです。水害が多発したため、現在の生田川に付け替えられ
ました。そこに生田川から水を引いてきて小川を復元してはどうで
しょうか。勿論、水害防止には万全の対策が必要です。
フラワーロードに南北に流れる小さな小川を復元するとともに、出
来れば、三宮大通りを東西に流れる小川を作れば都心の風景が一変
します。清流が流れる川を眺めながら都心の街中をゆったりと散歩
できるように整備するといいですね。小川にはフナや様々な魚が泳
ぎ、小川の岸には緑の木々が木陰を作り、季節折々の草花が目を楽
しませてくれる。
小川にはトンボが水を求めて飛んできます。ミツバチや蝶々も花を
求めて飛んできます。街路樹に様々な野鳥が訪れ可愛いい鳴き声が
聞こえてきます。暑い夏にはセミ時雨。川が出来ると風が通る道が
出来ます。ヒートアイランドの街に爽やかな風が吹き抜けます。コ
ンクリートの街に川が出来て、水が流れると街に潤いが戻ってきま
す。街の中に自然が戻ってきます。神戸の街の美しい景観がさらに
素晴らしものとなるでしょう。
かなり前のことですが韓国の首都ソウルで街中の道路を廃止して川
にしたところ人が集まるようになって街が活性化したとの記事を読
んだことがあります。神戸の街づくりにおいてもこれくらいの大胆
な発想が欲しいですね。神戸にはすぐ近くに六甲山の大自然があり
ます。少し工夫すれば街中に野鳥や様々な生き物が戻ってきます。
都心にいながら、様々は小鳥の囀りや昆虫の鳴き声や姿を楽しめる
なんてすばらしいと思いませんか。
私たちはこれまで「山、海へ行く」と言われたように、自然を壊し
て街を作ってきました。しかし、もうその時代は終わりました。こ
れからの時代は街に自然を取り戻す時代です。自然を破壊する時代
は終わりました。如何にして自然を蘇らすかがこれからの最大の課
題です。技術と知恵を結集して、自然を復元、再生するのがこれか
らの私達の責任ではないでしょうか。
神戸の都心に小川をつくるのは現実ばなれした夢物語と笑われかも
しれませんが、街づくりには夢が必要です。便利性、効率性ばかり
では疲れます。
あえて暴論と非難されると思いながら素人の提案をさせていただき
ました。
何かの参考になれば幸いです。
２０１５。５．２． 里山 歩樹
