神戸の街を歩いていると街角の片隅に小さな画廊に出会うことがよ
くあります。
商店や事務所ばかりが並んでいるところに小さな画廊を見つけると、
オアシスを見つけたようなほっとした気分になって、用事もないの
についふらっと覗いてみたくなります。小さな何でもない画廊です
が、それがあるだけで、その界隈全体が文化の香りがして品のよい
街に感じられるから不思議です。
私が時々行った小さな古い画廊が三宮本通り商店街にあります。歩
いて行っても、注意して探さないと通り過ぎてしまうような画廊で
す。小さな古い画廊ですが神戸ではよく知られた老舗の画廊です。
名前は確か「ほりかわ」と言ったと思います。少し前ですが、この
古い画廊が閉店するという記事が出ていました。寂しいですね。神
戸の街のかけがえのない文化施設がなくなるようで残念です。
私には特別の思い出があります。神戸の有力な経済人が集まる絵画
クラブがあります。今もあると思いますが年一回、会員の絵の発表
会が開催され、「ほりかわ」で開催されたことがあり、招待状を頂
きました。神戸の経済界のそうそうたるメンバーばかりなので、緊
張して行ったことを思い出します。
一人しか登れない急な階段を上がった2階と3階に画廊があります。
上がっていくと入口に受け付け台≫があり、神戸の有力経済人のメ
ンバの一人が受け付けを担当されておられ、「よく来てくれました。
ここに署名をお願いします」と言われて、恐る恐る、毛筆で下手な
字で署名をしました。
作品を拝見しますと神戸の有力な経済人の絵が処せましと並んでい
ます。どれも素晴らしい絵ばかりで感動しました。よく知っている
経済人の方から「安くしておくので一枚いかがですか」と言われて
苦笑いをしたことを覚えています。この思い出の画廊が神戸の街か
らなくなる。神戸の文化にとって大きなマイナスですね。残念でな
りません。
大きな文化施設やホールを作ることが文化振興ではありません。
神戸の街角にある小さな画廊を大切にしてもらいたいですね。
2015.2.2. 里山 歩樹