神戸は職人の街です。
神戸は「神戸マイスター」の称号を与えられたすぐれた職人がたくさんいます。神戸をすぐれた職人が尊重される街にしようと提案した、神戸の経営者がおられました。
その提案を受けて、神戸市が神戸マイスターを認定することになりました。その提案をしたのは、神戸洋菓子大手「モロゾフ」の社長をされていた松宮さんでした。
当時、松宮さんは神戸商工会議所の役員をされていました。ファッション都市・神戸の推進者の一人でした。
その松宮氏が、ヨーロッパの都市のように神戸を職人がいきいきと輝く都市にしようと提案され、それを受けて、商工会議所も行政に、職人の街・神戸の実現に取り組みました。その提案を受けて、「神戸マイスター」が生まれました。
マイスターには、洋菓子のパティシエや靴職人、洋服のテイラー、工場の職人さんなど、幅広い職人が選ばれて、「神戸マイスター」を認定しました。
この神戸の取り組みは日本でははじめてのことで、全国から注目されました。もちろん、神戸マイスターには、アパレルのデザイナーも選ばれています。
神戸マイスターに選ばれた職人がいる店舗には、「神戸マイスター」のマークがつけられているはずです。そのマークがついた店では、安心して商品を買うことができます。
神戸マイスターとともに、松宮さんが提案されたのが神戸のすぐれた商品を集めた「工房の街」をつくることでした。その松宮さんの提案を受けて、神戸商工会議所が行政に働きかけました。
その中でいろいろ検討したところ、北野にあった北野小学校が廃校になっていたので、そこを利用して、「北野工房のまち」を建設することになりました。
「北野工房のまち」では、そこでしか買えない神戸のすぐれた商品を販売することにしました。松宮さんの提案を受けて、神戸の有力な食品メーカーのUCC上島珈琲、伊藤ハム、モロゾフ、ゴンチャロフなどの企業が出店しました。
食品以外では、神戸の真珠、神戸のシューズなどの企業が出店しました。観光客が集まる北野の近くになったので、開店するとともに観光客がたくさん集まって、人気がありました。
小学校の運動場が観光バスの駐車場となったので、観光バスでたくさんの人が集まってきました。「北野工房のまち」は、今でも、年間100万人以上の観光客を集める、神戸の観光スポットとなっています。
今考えると、以前の神戸経済界にはすぐれた経営者がたくさんおられました。それらの経営者が、神戸の街の発展のため、努力されてきました。その一人がモロゾフの松宮さんでした。
そのほかにも、ワールドの木口さん、アシックスの鬼塚さん、UCC上島珈琲の上島さん、伊藤ハムの伊藤さん、田崎真珠の田崎さんなど、神戸のためなら、自社の経営を離れて、神戸全体のために全力で取り組まれた人がいました。
その人たちが、当時の神戸の街を支えられました。残念ながら今は、そのようなすぐれた経営者が少なくなったように思います。
大震災から25年が過ぎました。この25年は、失われた25年のようで、神戸経済が沈滞した時期でしたが、次の25年は、神戸が再生、発展する25年にしたいですね。
そのためにも、神戸の経済人の皆様には、昔の神戸の姿を思い出して、ガンバってもらいたいと思います。
神戸の経営者、ガンバレー!!
2020.1.20.(月曜日)
里山 歩樹 (藪野 正昭)