今年もはや2月に入りました。
この時期になると私が住んでいる川西の北の山では茶席に必要な炭の窯出しが始まります。
川西の一庫地方で冬に生産される炭火は「一庫炭」と言われて、茶席に欠かせない高級な炭として全国へ販売されています。
「一庫炭」は昔は池田へ出荷され、そこから全国へ販売されたので「池田炭」とも言われていました。川西の一庫地方は、日本一の里山と言われています。炭をつくるためのくぬぎの林が今も大事に育てられています。
私の子供の頃は川西の里山に行くとくぬ木林がたくさんあり、里山に行くと山のあちこちで炭焼き窯と小屋があって、炭をつくっていました。我が家でもおじがくぬ木を焼いて炭をつくってくれていました。
くぬ木でつくった炭は断面が菊の花のように見えたので「菊炭」と言われていました。「菊炭」は火付きがよく、火持ちがよいので茶席では欠かせない炭となっていました。
菊炭に火をつけると「キリキリキリー」と金属音がして、火力が強く、長く火がついていましたので、昔の家の中では火鉢では必ず菊炭をつけて暖をとったり、湯をわかしたりしていました。
私は、子供の頃は火鉢で菊炭をつけて、おもちや、干し芋を焼いて食べたものです。
今日新聞を読んでいると、川西の一庫地方では今年も一庫炭の窯出しが始まったと報道していました。菊炭は、窯の中に2mぐらいに切ったくぬ木を入れて、焼き、4日ほど窯の中で蒸してつくります。
今がちょうど窯出しの時期だと伝えています。かつては、川西では各地で炭づくりがされていましたが、今日では一庫地方で、1軒だけの家が菊炭を生産しているとのこと。
菊炭は貴重品ですのでつくるとすぐ売れるようですが、今年はコロナのために、茶席を楽しむ人が減って、生産も少なくなっているとのこと。コロナは川西の里の炭づくりにも影響しているとは驚いています。
新聞記事を読みながら、私が子供の頃に里山で見た炭窯のことを思い出しました。子供の頃の里山での炭窯と炭焼き小屋のことがなつかしく思い出されました。
皆さんは菊炭のことをご存じですか。
今は、火鉢で炭をつけることがなくなりましたが、子供の頃のことがなつかしく思い出されます。
時代が変わっても、日本の茶席の伝統を支える川西の一庫炭=「菊炭」をこれからも、いつまでも生産していってほしいものです。
2021.2.5.(金曜日)午前11時10分
里山 歩樹(藪野 正昭)